企業や自治体に求められる災害リスクマネジメント

地震に備える、BCP(事業継続計画)の必要性(2/2)

加藤 康広様(SOMPOリスクマネジメント株式会社 BCMコンサルティング部)

BCPやBCMに取組む上では、自社だけではなく取引先などステークホルダーとの関わり方も大切になってきます。
(BCPとBCMの違いについては、
『地震に備える、BCP(事業継続計画)の必要性(1/2)』をご覧ください)

ここでは、BCPに関連する利害関係者と、これからの社会におけるBCPの重要性について、引き続き、SOMPOリスクマネジメント株式会社 加藤様にお話をうかがいました。

 

BCPは誰から求められているのか

BCPでは、「重要事業」、「重要業務」、「目標復旧時間」などを、組織の状況に応じて、それぞれの組織が設定しなければいけません。組織の状況として考慮しなければいけない事項の一つが、様々な利害関係者です。

企業間取引では、取引先の顧客企業からBCPの取組状況を確認されたり、要求されたりすることがあります。

自動車産業や電機産業
例えば、自動車産業や電機産業のサプライチェーンの中では、自社がBCP・BCMの取り組むことはもちろんですが、部品・原材料の安定供給のため、サプライヤに対してもBCP・BCMの取組状況を定期的に確認しています。また、一部の企業では、BCP・BCMの取組状況が取引要件化しています。

インフラ業
インフラ企業などでは、サービスの停止が地域社会に与える影響が大きいため、監督官庁によりBCP・BCMの取り組みが求められています。

建設業
建設業では、災害時の地域復旧にその活動が欠かせないため、BCP・BCMの取組状況により官公庁での入札案件で加点されるなどインセンティブが与えて、取組を促している事例もあります。

小売業
小売業など、B to Cの事業では地域住民の生活に直結しており、有事には地域住民から早期再開の要望も高まります。
もちろん、社内のリスク管理の一環として、経営層・株主から要求されている場合もあります。

このように、BCPには様々な利害関係者が関係しており、その組織の状況を踏まえて、BCPを策定し、BCMの取組を進めていく必要があります。

これからの社会におけるBCPの重要性

近年、大規模地震や、激甚化する台風・豪雨などの自然災害の懸念、新型コロナウイルスなど新規感染症の流行、サイバー攻撃の激増など、企業にとって事業活動が停止する事象が多発・切迫しています。

その一方で、ICTの進歩により事業活動の効率化が進んだ一方で、受発注、製造、物流など各種の事業活動におけるリードタイムが以前より短くなっており、有事には即時に事業活動に影響が生じる事態が増えています。また、グローバル化の進展により、単一組織の局所的な事態においても、その影響が広範囲となることがあります。

さらに、業務のアウトソーシングを進めた結果、自社の復旧だけでは、事業継続が難しくなっています。サプライチェーンが拡大している上、コスト面から調達先の絞りこみも進めており、調達先の代替性も失われています。その結果、サプライヤ―の被災で部品・原材料の調達が困難となり、自社の事業を停止する事例も多くみられます。

このように、自然環境や社会環境の変化が組織に影響を与える一方で、組織内では効率化のため、事業活動の冗長性(レジリエンス)が失われる傾向にあり、事業活動が停止するリスクが高まっています。
このため、組織にとって、BCPを策定しておき、その実効性を高めておくことの重要となっています。

 

BCPには様々な人びとが関係しており、自分たちがBCPを実行するだけではなく、一緒に仕事をする相手がBCPを策定しBCMの取組みを進めている企業なのかを確認することが重要なんですね。

自然災害がいつ起きてもおかしくないこの世の中で、継続して生活し事業をおこなうためにBCP・BCMが必要不可欠であることを考え直すきっかけになれば幸いです。

 

2021.07.01