企業や自治体に求められる災害リスクマネジメント

地震に備える、BCP(事業継続計画)の必要性(1/2)

加藤 康広様(SOMPOリスクマネジメント株式会社 BCMコンサルティング部 )

これまで、地震による天井落下で事業所や工場、データセンターなどの事業資産に損害を与えたケースが数多く報告されています。2013年の東日本大震災では多くの企業が倒産や事業縮小に追い込まれました。また、直接の被害を受けていない企業でも、サプライチェーンの影響で倒産してしまった二次的被害も目立ちましたね。

全国で地震が頻発し、大規模地震も懸念されている今、企業の事業継続可能な環境構築のために天井にも地震対策が必要と考えています。近年よく耳にする「BCP(事業継続計画)」は建物の地震対策と密に関連すると考えられますが、そもそもBCPとは一体どのようなことなのでしょうか。

ここでは、建物内部の地震対策と関連するBCP(事業継続計画)の策定の必要性とその対策について、SOMPOリスクマネジメント株式会社 加藤様に教えていただきました。

BCPとは

BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)の略称です。

大地震や水害等の自然災害、感染症のまん延などの不測の事態が発生しても、組織の重要な事業を中断させない、もしくは中断しても、あらかじめ設定した時間以内に再開させるための方針、体制、手順等を示した計画のことです。

災害等の有事に備えた計画としては、従来から防災計画、消防計画などがありました。これらの計画は、人命安全の確保や、施設の被害防止・軽減を図ることを主な目的としていました。
BCPでは、それらに加えて、重要な事業の継続もしくは早期再開により、組織自体の継続を図ることを目的にしています。
BCPの実行性を上げるためには、事業再開までの体制や手順が決められているだけでは不十分です。

被害を軽減するための耐震対策や防災対策、早期再開のためのバックアップ拠点・施設の確保や複数購買化など、様々な事前対策が必要となります。これらの事前対策を実施するには、対策コストが膨大になるため、組織の全ての事業・業務を対象とするよりは、BCPの対象となる事業・業務を絞りこむことが現実的な対応となります。このような事業・業務を、BCP上の「重要事業」・「重要業務」と呼びます。
また、有事において事業をいつまでに(何日で)再開するかは、その組織の事業内容や、顧客や地域社会など利害関係者からの要望を踏まえて、その組織が事前に設定しなければなりません。この期間を「目標復旧時間」と呼びます。
BCPとは、どのような有事においても、組織が決めた「重要事業」・「重要業務」を「目標復旧時間」以内で再開するための計画となります。

事業継続計画(BCP)の概念

事業継続計画(BCP)の概念                                     出典:内閣府 防災情報のページ「事業継続ガイドライン(第三版)」

 

BCPとBCMの違い

BCMとは、事業継続マネジメント(Business Continuity Management)の略称です。

BCPの策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検・見直し、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動のことです。

BCPを策定しただけでは、有事にBCPが実行できるとは限りません。平時において、BCMの活動を実施しておくことにより、BCPを継続的に改善することで、組織の事業継続の能力を向上させることが求められています。
BCPを策定した後、平時におけるBCMの重要な活動は、事前対策の実施と教育・訓練、それらの結果を踏まえた点検・見直しです。

事前対策としては、被害を軽減するための建物や生産設備の耐震対策、早期再開のためのバックアップ拠点・施設の確保や複数購買化など、事業継続ために必要な対策に加え、人命安全の確保、二次災害の防止、地域貢献・地域との共生といった観点での防災対策も、当然、考慮しなければいけません。このような事前対策を優先度に応じて計画的に実施していきます。

教育・訓練としては、事業継続の重要性を関係者(経営層、従業員など)に共通認識として持たせ、事業継続を組織の活動として定着させることが大切です。単に、BCPを紙面やHPで周知するだけでは不十分であり、継続的に教育・訓練を実施していく必要があります。訓練としては、避難訓練、消防訓練、資機材の操作訓練などの実働訓練のほか、有事の行動手順、判断・意思決定を確認する机上訓練が行われます。

点検・見直しでは、組織変更・人事異動、事業内容の変更など組織状況の変化に伴う見直しは当然ですが、それに加えて、平時における事前対策や教育・訓練の実施状況を踏まえて、BCPが「本当に機能するのか」という観点で点検が重要です。また、BCPの発動有無を問わず、実際の有事対応を実施していれば、事態が終息した時点で、対応状況を振り返り、その反省点をBCPに反映して、次の有事に備えます。
平時において、このような一連の活動を実施して、BCPの継続的な改善を図り、有事に備えることが、BCMの目的です。

熊本地震など、実際の被災事例においても、BCM活動に取り組んでいる企業と、BCP策定で止まっている企業を比較すると、復旧期間に大きな差が見られます。また、近年では、顧客企業から取引先に対するアンケート(サプライヤーアンケート)などでも、単にBCPの策定の有無を尋ねるだけの内容から、事前対策の実施状況、BCP策定後の教育・訓練の実施状況を尋ねる内容が増えています。
平時におけるBCMの重要性が高まっています。

BCMのイメージ
出典:内閣府 防災情報のページ「事業継続ガイドライン(第三版)」

 

BCPを策定しただけでなく、平時においてBCMの活動を繰り返し実施しておくことでBCPを維持できるのですね。
そのほか、BCPに関連する利害関係者とは、また、これからの社会におけるBCPの重要性についてもお話を伺いました。
こちらについては、続くコラム『地震に備える、BCP(事業継続計画)の必要性(2/2)』にてお伝えいたします。

 

BCPや事業継続に関連する、天井の地震対策の情報

事業継続を目的に、KIRII耐震天井が導入された「宮島口旅客ターミナル(広島県)」。
住民の取組み等が継続的に行われる施設「みなとオアシス」として国土交通省港湾局に登録され、災害時の支援の役割も担っています。

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2021.04.26