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東日本大震災、熊本地震などの巨大地震により建物内部の脱落・損傷による被害が相次ぎました。
特に、天井をはじめ、照明・空調・ダクトなどの設備機器関連、防煙垂れ壁、さらに壁や柱、窓ガラスなどの危険性が高く、耐震性の確保が急務とされています。
今回は、オフィスなどでよく見かける間仕切り壁(パーティション)の地震対策について、間仕切り壁(パーティション)の開発をおこなっております、株式会社コマニー様にお話を伺いました。
大地震に耐える「シンクロン」技術を開発
―――大地震により壁・天井などの建物内部の落下や損傷が繰り返し発生しておりますが、間仕切り壁(パーティション)の地震対策の重要性をどのように考えますか?
間仕切り壁(パーティション)には、比較的背の低い自立型と天井まで達するハイパーティションなどがあり、オフィスや工場で数多く設置されています。
東日本大震災や熊本地震などの近年の大地震では、自立型パーティションのみならず、ハイパーティションにおいても、損傷や倒壊等が多数発生しました。これにより、ハイパーティションは一見頑丈な壁に見えるものの、大地震では室内に設置されるパーティションに加わる揺れが従来のパーティション業界での想定基準より大きいとみられ、必ずしもパーティションが大地震に耐えうるものではないことが分かってきました。今後起きると予測されている大地震においても、倒壊や落下により人的危害を及ぼす、また避難が阻害される、事業継続が困難になるなどの可能性があり、パーティションの耐震性向上が望まれています。
原因として、従来のパーティションは施工性を重視していたため、パネルや柱(スタッド)が固定されておらず、かつ変形への追従性も低かったことから、業界基準を超えた加速度や層間変位が加わった場合、パネルや部材に外れ・脱落・変形などが生じたり、転倒が生じていたと考えられます。
弊社コマニーは、金沢工業大学様との8年にわたる共同研究において、ハイパーティションが大地震にを耐えうるようにするための「シンクロン」技術を開発しました。シンクロンは大地震により加わる過大な加速度や変形に対して耐えることを目指し、また既に設置済みのパーティションにも導入できるシステムです。このように、研究に裏付けされた製品開発を通じて、実用性や機能性はそのままに、大地震でも倒れないパーティションの切り替えていくことが喫緊で進めるべき地震対策であると考えています。
天井の変形も加味した耐震性評価の必要性
―――地震対策として間仕切り壁(パーティション)にはどのような性能が求められるのでしょうか?
これまでパーティションの耐震基準は、JISやパーティション工業会基準等に規定され、可動間仕切が建物の変形に耐え得る性能として、「想定される建物の変形が1/150の面内変形で使用上有害な割れおよび剥がれがないこと」とされています。
業界としてこの基準に基づきパーティションの変形追従性を確認することで耐震性評価を基本してきましたが、上述のように、昨今の想定を超える大地震では不足していると思われ、地震時に加わる地震力、そして建物の変形だけでなく天井の変形(水平と鉛直)も加味した変形も考慮する必要があると考えられます。
大地震に求められる耐震性能は、まず地震力への対応として、大地震の地震力は、ビルの上層階の増幅、パーティションの揺れなども考慮し、設計用水平震度が最大2.0を想定した強度確保することが適切ではないかと考えています。変形への追従性については、建物の揺れと天井の揺れを同時に加わることを考慮し、パーティションが天井の揺れに対して抵抗する面内方向の揺れに対しては層間変形角1/50、抵抗しない面外方向に対しては1/20程度の変形に対して転倒や脱落、危険な損傷が生じないことが適切だと考えています。
建物が大破したり天井の脱落等がない限り、極めてまれな大地震に遭遇してもパーティションが室内の人や設備等に危害を与えにくくなると思っています。これは大学との共同研究を通じて、静的加力実験だけでなく、数多くの動的加振実験を通じて至ったことです。ちなみにこの耐震性能を満たしたパーティションは、これまでの地震で目立った損傷は生じていません。
間仕切り壁(パーティション)は一見頑丈に見えていても、大地震による損傷や倒壊が多数発生したことにより地震対策が望まれていることがわかりましたね。
従来の耐震基準はパーティションの変形追従性を確認することで評価されていましたが、大地震に備えるためには建物や天井の変形も加味した評価をすることが地震対策のポイントであると感じました。
間仕切り壁(パーティション)の耐震性能を付加することを考慮して、より安全・安心な建物内部の管理・設計に努めていただけましたら幸いです。
なお、天井の変形・追従性に関してお困りの方はお問い合わせください。
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