建物内部を構成している建築資材の地震対策

避難する時間を確保!煙の流動を遮断する、防煙垂れ壁の地震対策

藤岡 峻平様(帝人フロンティア株式会社 繊維資材第一部大阪キャンバス資材課 )

大規模地震発生時には、建物の倒壊や家具の転倒によってガス管や電気配線が破損し、火災が発生するケースが多々報告されています。
火災による煙で視界が妨げられることで避難が遅れ、人びとがいのちを落とす危険性もあります。

このような事態を防ぐために、火災時の煙の流動を遮断する防煙垂れ壁の開発に積極的に取り組まれているのが、帝人フロンティア株式会社です。
同社は、2017年に軽量な不燃シート製の防煙垂れ壁「かるかべ®」を開発されました。
今回は、防煙垂れ壁に求められる地震対策や、今後の展望などについて、繊維資材第一部大阪キャンバス資材課の藤岡峻平さんにお話を伺いました。

 

硝子製は危険!熊本地震をきっかけに不燃シート製を開発

— 「かるかべ®」の発売は2017年ですね。開発の経緯を教えてください。

前提として、現在設置されている防煙垂れ壁の大半が硝子製となっております。
火災への備えとして、設置が必要な防煙垂れ壁ですが、地震発生時には垂れ壁の硝子が割れてしまい、尊大な被害を受ける危険性があります。

近年、不燃シート製の防煙垂れ壁が注目される様になったのは2016年の熊本地震です。50店舗以上の商業施設で落下被害が発生しました。火災時へ備えとして有能な垂れ壁も地震の際には落下・飛散の大きな脅威となりました。
これを機に商業施設、家電量販店、ドラックストア等の人が多く集まる施設は一斉に硝子製から不燃シート製への転換が進みました。
さらに2018年の大阪北部地震では、店舗の被害に加えて、硝子の落下で軽傷を負った事例もあると聞いております。
何気なく買い物にいった際に垂れ壁の落下で被害を受ける可能性は身近に迫っていると考えております。

また地震での落下に限らず、建築物の老朽化や防煙垂れ壁の硝子を支えるフレームの金属疲労等によって、毎年数件の落下事故が報告されています。垂れ壁が落下し人身事故を起こさせない為にも、硝子製から不燃シート製防煙垂れ壁への代替は急務であると強く考え「かるかべ®」の開発に至りました。

硝子製の約1/10の軽量化を実現

— 煙の流動を妨げ避難する時間を確保するために必要な防煙垂れ壁。防煙垂れ壁にはどのような性能・機能が求められると考えていらっしゃるのでしょうか。

軽量性・免震性・施工性だと考えます。

<軽量性>
軽量性は硝子との大きな違いだと考えます。「かるかべ®」には国土交通大臣認定の不燃シートを使用しております。透明度は90%以上、業界トップクラスの不燃透明シートです。商品ラインナップとしては、シートをアルミ枠で固定した【パネルタイプ】と両サイドからシートを引っ張り、下枠が不要である【テンションタイプ】がございます。硝子製と比較し、約1/10の軽量化を実現しました。

<免震性>
「かるかべ®」はオプションで緩衝材を用いる事で免震性を保持できる為、硝子製と比較して落下しにくく、飛散しにくい製品になります。地震大国である日本で、垂れ壁に免震性を保持する事は必須であると考えております。

<施工性>
最後に施工性です。「かるかべ®」は硝子と比べ軽量の為、非常に施工し易い商品です。また野縁さえあれば下地を補強する必要もございません。初めて施工される業者様でも、施工要領書をご参照頂きながら問題なく施工して頂けるほど、容易に施工することが可能です。費用は硝子製と比べ高いイメージですが、硝子製に比べ人工代を抑えられる点で硝子製と価格帯が変わらなくなって来ているのも特徴です。

 

家電量販店、ドラッグストア、オフィス等の身近な施設で見かける防煙垂れ壁。
きちんと地震対策されているかどうかは、いざという時に非常に重要になるポイントです。
これまであまり気に掛けることがなかった防煙垂れ壁でしたが、今回お話を聞いたことで、硝子製なのか、不燃シート製なのか、など注目して見てみたいなと感じました。
火災から発生する煙、またそれ自体の落下による被害も防ぐために、「かるかべ®」のような製品を使った地震対策も重要ですね。

取付け方法、性能確認試験など詳細につきましては製品ページ(帝人フロンティア株式会社サイトにリンク)をご覧ください。

2022.05.27