専門分野は建築構法計画および建築生産。建築生産の視点から、生産と設計の関係、建築技術の継承に関する研究、外壁を中心とした非構造部材の耐震性に関する研究などを行っています。特に非構造部材の耐震性の分野では、兵庫県南部地震の被害調査報告を多数行うとともに、構造体との関連などの被害原因の分析や、東日本大震災の被害の分析を行い、国土交通省や文部科学省の非構造部材に関する基準類の制定、改正にも参加しています。
これまで地震によって、建物内部の被害が数多く報告されています。
例えば天井落下、壁の倒壊、床の損傷、窓の破損などが起こり、これによって人びとが怪我や亡くなる事故の原因にまでなったケース、また事業資産に損害を与えた例も数多く報告されています。
こちらでは、公共施設や商業施設、オフィスなどの日頃過ごす建物内部の注意すべきポイントを紹介します。
今回は、東京大学大学院新領域創成科学研究科の清家剛教授にお話を伺いました。
建物内部に潜む危険とは
―――地震発生時に建物内部の危険性を考える場合に注意すべき点はありますか?
まずは、住宅、非住宅どちらを取り扱うのかを明確にする必要があります。
住宅では、家具に関することがメインになると思います。
商業施設や学校などの非住宅では、地震による天井の危険性を考え、人が集まる空間について情報収集することが求められると思います。
―――人が集まる空間では、何に注意したらいいのでしょうか?
まずは、上から落ちてくるものを考えたらいいのではないでしょうか。
天井をはじめ、照明・空調・ダクトなどの設備機器関連、防煙垂れ壁、さらに上部にある壁や柱、窓ガラスなども危険な場合があります。
オフィスや学校などの人が集まる空間は、住宅と同様にオフィス家具などが転倒することも危険ですね。
―――人が集まる空間以外では、何に注意したらいいのでしょうか?
逃げるときの避難経路になる廊下や、逃げるための出入り口の安全性も確保しておかないと外に逃げられないですし建物に戻ってこられなくなるのではないでしょうか。
天井や壁が落ちたり、備品などが転倒したりして避難経路を塞ぎ、ドアが開かなくなって逃げられなくなることを考えると日頃の点検などで避難経路の安全性を確保しておく必要性がありますね。
―――天井の危険性についてはどのようにお考えでしょうか?
東日本大震災では天井落下による死傷事故が発生してしまいました。
そのため、いわゆる特定天井に関する法整備が進められ、規制の対象になりましたので、高いところにある重たい天井は危険性が高いと考えられます。
天井には照明などの設備機器も取り付いているため、総合的な安全性確保も必要だと思います。
さらに、天井の落下は避難経路を塞いでしまうことも考えられるので、高いところの天井だけではなくて、防災の目線で用途ごとに安全性を確保する必要があります。
また、壁の倒壊などでも同じようなことが起こりますので、その点も注意すべきだと思います。
そのほかの危険性もあげればきりがありませんが、今回は天井落下を中心にコメントいたしました。
今回は、防災目線での建物内部の危険性について教えていただきました。
地震はいつどこにいる時に起きるか分かりません。
日々の地震対策だけではなくて、外出先で地震が発生しても被害をできるだけ避けられるように、まずはポイントを押さえておきましょう。
- 地震によって、天井・設備機器・防煙垂れ壁・ガラスなどが落下する危険があるため、建物内部の地震対策が必要であること
- 逃げるための避難経路、出入り口が地震発生時に機能するように、日ごろから安全性の確保をしておくこと