天井の地震対策の必要性

大地震発生時、首都圏の被害抑制・都市機能の早期回復の実現にむけた取り組みに参画
ー実物大の建物を震度6強で加振ー

国立研究開発法人 防災科学技術研究所 地震減災実験研究部門・研究員(佐藤 栄児様、福井 弘久様)

2022年が始まって間もないなか、大分県・宮城県で発生した震度5強の地震、トンガ噴火による津波など自然災害が繰り返し発生しました。
さらに、政府の地震調査委員会によると、南海トラフで今後40年以内に「M8.0~9.0」級の地震が発生する確率が、前年の「80~90%」から「90%程度」に引き上げられました。また宮城県沖地震におきましても今後30年以内に「M7.4」程度と想定される地震の発生確率が「70~80%」に引き上げられ、巨大地震への警戒が切迫しています。

KIRIIは、建物内部の安全・安心な空間づくりをビジョンに掲げ、地震に強いまちづくりに貢献すべく、大規模地震発生時に都市機能の早期回復・復興を実現することを目標とした、「首都圏レジリエンスプロジェクト」に参画しています。
プロジェクトでは、実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)の振動台設備を用いて、実際に起こり得る大規模地震の震度に対して建物内部にどの程度の損傷・崩壊が生じるかを観察し、解決策を導くための評価方法を検討しています。
こちらの取り組みについて、E-ディフェンスを所管する国立研究開発法人防災科学技術研究所のインタビューを交えてご紹介いたします。

 


首都圏レジリエンスプロジェクトとは
文部科学省主幹のプロジェクト。
大地震発生時の首都圏の被害拡大を抑制し、都市機能の早期回復・復興を実現することを目標に、産学官民で連携し地震動観測データおよび非構造物を含む構造体の損傷に対するデータを蓄積し統合します。
(参考:https://forr.bosai.go.jp/sub_c/

 

E-ディフェンスとは
国立研究開発法人防災科学技術研究所が所有する世界最大級の実験施設「実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)」。
阪神・淡路大震災で発生した構造物被害の教訓を活かし、地震から人々のいのちを守る構造物の設計を目指して、実大規模の構造物を実際に破壊し、破壊メカニズムの解明や耐震補強効果の検証等を行います。
(参考:https://www.bosai.go.jp/hyogo/

 

 

防災科学技術研究所の兵庫県耐震工学研究センター内にある実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)では、実物大の構造物への加振実験が行われています。構造物だけではなく、建物内部の設備や家具の動きも把握し建築物の安全性向上へ貢献しています。
今回は国立研究開発法人防災科学技術研究所 地震減災実験研究部門・研究員の佐藤さんと福井さんに、E-ディフェンスの歴史や大規模地震に向けた地震対策の重要性等についてお話を伺いました。

 

地震災害による人的被害、半数以上は建物内部で起きている

— E-ディフェンスはいつ頃どのようにして取り組みが始まったのでしょうか?

本プロジェクトは、防災科学技術研究所が推進する「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」の課題の1つである、「サブプロC 非構造部材を含む構造物の崩壊余裕度に関するデータ収集・整備」の内、「室内空間における機能維持」において、地震時に建物の室内空間の機能を維持することを目的にH29年度より推進されています。

過去の地震災害を振り返ると、建物の倒壊や橋脚の破壊などが大きく取り上げられていますが、人的被害にフォーカスを合わせた場合では、室内における非構造部材、家具、什器による被害がその半数以上を占めていることがこれまでの調査結果より報告されています(図)。そこで、構造物の耐震性についてだけではなく、室内空間の機能維持性能に対しても十分な検証・対策が急務です。

— E-ディフェンスでは、具体的にどんな企業が参画して、どんな実験を行っているのでしょうか?

今回の実験では、試験体内部に室内空間を再現し、加振実験を行いました。
検証目的に応じて、設置する非構造部材、屋内設備、家具、什器等を組み替え、室内環境を変化させることができ、これにより効率的に室内空間に同一条件での振動台実験が可能となります。

具体的には、2021年12月と2022年1月の2シリーズに分けて実験を行い、2021年12月では、3体のユニット内に博物館等の展示施設を再現し、次に2022年1月では、3ユニット内それぞれに、オフィス空間、住居空間、サーバーフロア空間を再現して実験を行いました。
室内空間を再現する壁、天井、家具、什器等に関しては、産業界や防災関連機関(家具什器・非構造部材メーカー、公的機関等、約30機関)で構成されている、室内空間を中心とした機能維持のための研究会(注1)と技術協力をしております。

注1) 室内空間を中心とした機能維持のための研究会参加メンバー
IMV(株)、NPO安心安全のまちづくり機構、(株)イトーキ、FKK、エプソン、 (株)オカムラ、カリモク皆栄(株)、(株)桐井製作所、(一財)建材試験センター、(株)構造計画研究所、(独)国民生活センター、コクヨ(株)、NPO小杉駅周辺エリアマネージメント、コマニー(株)、セコム(株)、センクシア(株)、大成建設、タカラスタンダード(株)、千葉大学、帝京大学、TOA(株)、東京国立博物館、東京消防庁、東京消防庁消防技術安全所、日東工業(株)、日本オフィス家具協会、NHK技研、Panasonic、ビジネス機械・情報システム産業協会、藤澤建機(株)、フリーアクセスフロア工業会、プラス(株)、(一社)防災事業経済協議会、ホタルクス、明治大学、(株)山小電機製作所、防災機器検査協会(順不同、仮メンバーも含む)

研究会参加者見学の様子 (㈱桐井製作所撮影)

実験最終日の研究会メンバー集合写真(防災科学技術研究所撮影)

 

 

 

 

 

 

 

建物内部の地震対策は、世の中の防災力向上につながる

— 実験結果は、どのように活用されるのでしょうか?

一般的に振動台実験により得られた知見に関しては、論文や指針等で取りまとめることで広く公表し、今後の耐震技術向上に有効活用いたします。

今回の実験では、地震時の室内空間の被害状況を精度よく再現しており、地震時に建物(構造体)が健全でも、家具・什器・天井・壁(非構造部材)の転倒・転落により、多くの人的被害が発生することが示されたことから、実験映像を用いて、多くの方々に防災に関しての啓蒙・啓発を行えるものと考えております。
また、今回の実験で使用した試験体は、繰り返しの使用を可能とするため、主要構造部材を無損傷に留める強固な設計で製作されています。そこで、今後も室内空間を中心とした機能維持のための研究会では実験結果の検証を行い、各メーカー様が自社の製品の性能検証を行って頂くと同時に、更なる耐震性能の向上につなげて頂き、再度新たに実験を行うことも可能となっております。 

以上の取り組みにより、非構造部材を使用する側、提供する側の両方が地震時の被害軽減に向けて取り組みを強化することが世の中の耐震・防災力の向上につながると考えております。

想定首都圏地震40%加振後の様子(㈱桐井製作所撮影)

 

 

 

 

 

 

— 活動を通して、大規模地震に向けた地震対策をどのよう進めていきたいと考えておりますか?

本研究では、以下の項目の達成を目標とし加振実験を行いました。
1)機能維持性能の検証システムの確立と標準化
2)機能維持に関わる判定法の科学的創出
3)総合的な耐震性向上・機能維持のための対策検討
4)人的影響・防災教育システムの検討

「機能維持性能の検証システムの確立と標準化」では、室内空間を再現し、繰り返し実験可能な振動実験検証システムを構築します。これを用いて室内空間の安全性の評価などを同一条件で実施する手法を提案し、実験手法の標準化などを目指します。

「機能維持に関わる判定法の科学的創出」では、人が地震被害を判断する時、視覚、聴覚、嗅覚などからの情報を用いることに着目し、従来の加速度、変位等のセンシングに加えて、カメラ映像や音等(五感センサ)のデバイスを利用した定量的な被害評価システム(図)の構築を目指します。

「総合的な耐震性向上・機能維持のための対策検討」では、様々な状況下で設置された家具、什器を含んだ各種非構造部材の地震被害を、より簡易で効果的に低減できる対策方法を検討します。

「人的影響・防災教育システムの検討」では、振動実験では直接的に評価できない人的被害の影響に関して、過去の地震災害における人的な実被害と実験時の評価による想定被害とを融合させ、人的被害を含んだ被害モニタリングシステムの構築を目指します。

図 室内被害の画像解析

 

— 最後に、差し支えない範囲で構いませんので、桐井製作所を選んで頂いた理由や当社と取り組んだ感想など教えていただけますと幸いです。

室内空間を中心とした機能維持のための研究として参画頂きありがとうございます。
今回の実験に関しては、各企業様が自社製品の性能検証・耐震性評価を行って頂くことからも、振動台実験、試験体は防災科学技術研究所が準備致しましたが、内部空間を再現するには各企業様のご協力が必要不可欠でした。壁・天井・床部材に関しては、桐井製作所様に一番に材料提供・技術協力の意思を頂戴し、実験へと至りました。
3つの試験体にそれぞれ異なる仕様の天井を計画頂き、耐震性能検証を行って頂くなど、実験内容についても積極的にご提案頂きました。
実験時も社員の方々が、真摯に損傷観察などを実施頂いていた様子からも、防災・減災に意識が高い企業様であると認識しております。
今後も、室内空間を中心とした機能維持のための研究での活動は継続して行いますので、引き続きよろしくお願い致します。

 

実験で得た新たな知見を基に、より耐震性を高めた製品開発につなげていく

KIRIIは地震災害からいのちを守る「KIRII耐震天井」をはじめ、建物内部の安心・安全に向けたソリューションの企画・研究開発、さらに確かな品質確保のための技術検証に力を注いでいます。
今回プロジェクトメンバーとして参加した開発部開発グループマネージャーの下氏さんに今回の実験に参加した背景やプロジェクトを通して感じたことについてお話を伺いました。
インタビュー記事は当社公式facebookに掲載しておりますのでぜひご覧ください。
⇒KIRII公式Facebook

加振実験後の観察の様子(桐井製作所撮影)

 

 

 

 

 

 


KIRIIは住み続けられるまちづくりに貢献するため、地震対策に係る研究プロジェクトへの参加のほか、毎年開催される建築学会での論文発表、当社技術研究所における天井、壁、 床の用途・目的に応じた多種多様な実験など、研究開発に注力しています。

⇒建築学会の論文は当社ホームページにて公開中

また、実際にE-ディフェンスの現場を訪れた見学レポートをFacebook(防災野いずみの防災情報室)に掲載しております
現場でしか見ることの出来ない実験の様子をお届けしておりますので、ぜひご覧ください。

 

2022.02.24