天井の地震対策の設計

接合部(ビス)のはなし

技術委員長 塩入 徹様(日本耐震天井施工協同組合)

天井落下や被害が繰り返し報告されているなかで、2021年2月13日に発生した福島県沖地震で特に目立った天井被害のひとつは、天井板のみの落下でした。

天井板のみの落下がなぜ起きているのか、国内主要建材メーカーとビスの強度試験方法の標準化を推進している日本耐震天井施工協同組合(JACCA)の塩入技術委員長にお話を伺いました。

 

日本耐震天井施工協同組合(JACCA)のご紹介

耐震天井の技術や品質の向上を図るとともに、耐震天井の導入・普及を推進することによって、安全・安心な空間を提供することを目的として活動。
2005年の宮城地震による屋内プールの天井落下事故、2007年の新潟県中越沖地震の天井落下など、天井の落下被害が見受けられるようになったことがきっかけとなり、施工者の立場から耐震天井の普及を目的として2008年に協同組合を設立。
以後12年にわたり、2011年の東日本大震災を挟み、天井の耐震化の必要性を訴え、耐震天井の普及を推進している。
(公式ホームページ:https://www.jacca.or.jp/

 

天井板のみの落下が起きる原因のひとつは「ビスの規格」

一般に流通しているビスの中には、JIS規格よりも直径が細かったり、頭のサイズが小さかったりする各ビスメーカー独自の規格が存在します。このため、地震等による振動や衝撃により、ビスの破損が起こったり、天井板のボード等がビスから頭抜けして落下したりします。

JIS規格品のビスを使用すること

JACCA では設立当初より耐震天井のビスに関しては独自の品質基準を設けてきました。
まずJACCA 認定工法で使用できるビスはJIS規格品を基本としており、心部硬度、表面硬度、および許容耐力データを確認して使用しています。
JIS 規格品に比べると非JIS 規格品は実際の耐力が2~3 割も低いことがわかっています。

データ提供:KNフジニッテイ株式会社

冒頭にもコメントした通り、実際の現場ではこのJIS 規格品のビスがほとんど使用されていません。
ビスの品質が不明ということはビスの直径や長さに関しても信頼性が低いということで、さらに心部硬度もJIS 基準から大幅に外れ、硬くて刺さりは良いが折れやすいものが多く、実際の現場では性能の怪しいものが多数流通しています。

官庁関係の工事でさえビスについての品質を求められていないケースがあるので、もう一度設計図書に記載されたビスの品質を確認し、実際の現場ではどのようなビスが使用されているのかを発注者や設計者、設計監理者は認識する必要があります。
当然施工者もビスのサイズだけではなく品 質と性能を意識して資材を購入し施工して頂きたいと思います。

 

正式名称:タッピンねじのねじ山をもつドリルねじ

正式名称:ドリリングタッピンねじ

 

 

 

 

 

 

 

耐震天井は各使用部材の品質を確認し、その部材で耐震設計を行い、安全な天井を施工する必要があります。その各耐震部材を接合する重要な役割をこの小さなビスが担っているのです。

JACCA の認定工法に使用できるのは前述したJIS 規格品の他、JIS 認証を取得しているメーカー製のJIS 規格準拠品のビスも認定しています。
JIS 規格準拠品とは外形寸法、硬度等の機械的性質がJIS 規格品と同等以上で、表面処理方法だけがJIS 規格に設定がなかったものとなっています。

例えば三価クロムめっきが表面処理の主流となっていますが、最近は環境を考慮し、クロムを全く含まない塗装系のものが増えてきています。ところが、この塗装系の表面処理方法が以前はJIS 規格で認められていなかったために、JIS 規格から外れてしまい、JIS 規格品の認証を得ることは出来ませんでした。

当然、塗装系も表面の耐食性能等はJIS規格めっき品と同等以上であることが求められます。
そこでJACCA ではJIS 認証を取得しているメーカーが生産するJIS 規格品同等以上の性能を有する塗装系で表面処理されたビスもJIS 規格準拠品として認定することにしました。ちなみに現在ではめっき以外の塗装系の表面処理であってもJIS 規格品として認証を取得する事が出来るようになりました。
よって今後は、JACCA の認定ビスも全てJIS 規格品に統一される予定です。
設計者の方々には設計図書にビスは「JIS 規格品」と記載頂きたいと思います。

 

非JIS 規格品はJIS 規格品に比べると実際の耐力が低いという結果がでていますが認識がまだまだされていないためJIS 規格品が現場で使用されるケースが少ないことに驚きましたね。

これからはビスの品質にも注意して設計、施工していただけますと幸いです。

 

2021.07.01