学校、オフィス、商業施設など公共施設の天井は、吊り天井と呼ばれる天井が吊られており、地震発生時にはブランコのように揺れて天井が落下する危険性が潜んでいます。
そこで、地震被害を防ぐために開発されたのが『耐震天井』です。
こちらでは、天井落下のメカニズムと耐震天井の仕組みや特長ついて、桐井製作所開発部エキスパートによる解説をお届けします。
吊り天井とは?
人々が集まる商業施設、公共施設、避難施設などでは、主に「吊り天井」が採用されています。
吊り天井は、建物の枠組みである構造部から直径9㎜のボルトを垂らし、金属の部材で構成された格子状の骨組を吊り下げています。
地震が発生した際は、「吊り天井」がブランコのような横揺れを起こし、「吊り天井」の端部が建物本体や壁などに衝突します。その衝撃で「吊り天井」が壊れて落下したり、地震の揺れによる不規則な力や衝撃で、各部材が変形したり、結合部分が外れてしまうことがあります。
耐震天井のポイント
天井の落下を防ぐために開発された天井が、耐震天井です。
桐井製作所では、「パーツの補強」「ブレースの設置」「クリアランスの確保」の3点の対策をすべて施した吊り天井のことを「KIRII耐震天井」と呼んでいます。
- パーツの補強
補強金具を使用することで、パーツの損傷による下地材の脱落を防ぎます。 - ブレースの設置
天井の水平方向の変位を抑制します。 - クリアランスの確保
天井と壁の間に隙間を設けることで、壁との衝突による天井端部の損傷を防ぎます。
建物の揺れなどに追従することが天井に求められるようになっており、ブレースを設置する耐震天井でも、壁と天井との隙間(クリアランス)の確保が求められます。
桐井製作所は、2006年に業界初の耐震天井「耐震Powerシリーズ」を開発し、それ以来、さらなる耐震天井を目指して進化し続けています。
▶ 詳しくは「開発ストーリー(桐井製作所 企業サイト)」へ
吊り天井による耐震化が難しい天井
講堂や音楽ホールなど音響に配慮して重い天井板や複雑な折れ曲がり形状の天井を採用するケースが増えています。
前述の耐震化を施すことが難しく、より慎重に天井の耐震計画が必要になります。
吊り天井による耐震化が難しい天井をあげます。
● 天井ふところが大きい
(理由)低い建物よりも、高い建物が揺れやすいように、天井も吊り長さが大きくなると揺れを止めことが難しくなります
● 設備機器が多い
(理由)適切にブレースを配置する必要があるため、天井裏に機器類があると制約が多くなります
● 形状が複雑
(理由)段差形状がある場合は、折り曲がり部分にクリアランスの確保が必要です。また、吊り天井にて曲面や段差形状を施せる範囲が限られます。
● 重量が大きい
(理由)地震力も大きくなるため補強を強くする必要があり、ブレースの数が増えます。
上記にあてはまる場合は、準構造耐震天井による設計が考えられます。
詳しくは、別コラム「準構造耐震天井のポイント」で解説いたします。
「一般的な吊り天井(耐震性を考慮しない天井)」に比べ、耐震天井は性能を付加しているため、コストも工期もアップする傾向にあります。
また、ブレースの配置や接合部の金具も専用の部材ですので、事前打ち合わせや注意点の共有が必要です。
設備機器等の配置計画なども、設計段階で意匠設計、構造設計、設備設計の3者にて打合せをした上で計画されることを推奨いたします。
また、正しい設計がされていても、しっかりと施工がされていなければ意味がありません。
正しい耐震天井の施工が必要です。
当社が加入しております日本耐震天井施工協同組合では、施工技術者の認定制度により技術者の育成が行われています。
参考:日本耐震天井施工協同組合 ホームページ
https://www.jacca.or.jp/
こちらでは、天井の落下はどのようにして起こるのか、そして、天井の落下を防ぐための耐震天井のポイントについてお伝えいたしました。
特定天井・告示771号等技術基準の解説については、別コラム「KIRII耐震天井と告示771号対応天井の違い」にて解説しておりますのでこちらもご覧ください。
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