2011年の東日本大震災で発生した天井の脱落被害を受け、国土交通省は建築基準法を改正し、2014年4月1日に国土交通省告示771号が施行されました。
国土交通省告示771号(以下、告示771号)では、「特定天井」という新しい用語が定義され、これに該当する場合は、天井脱落対策に係る技術基準に適合させる設計が義務付けられました。
※特定天井については「KIRII耐震天井と告示771号対応天井の違い」をご覧ください。
建物の設計をされていても、天井脱落対策に係る技術基準に適合させる天井の設計をされたことがない方はいまだ多いのではないでしょうか。
そこで、これから天井の耐震設計を始める方のために、何から手をつけたらいいのか、何に注意して設計を進めたらいいのかなど、実際に天井の耐震設計をされた設計者の方にお話を伺いました。
―――昨年、某武道場の天井の耐震設計におきまして、桐井製作所にて設計のご協力をさせていただきました。告示771号に適合した天井の耐震化でしたが、いままでに天井の耐震設計をされたご経験はありましたか?
以前に、民間企業の施設の天井の耐震設計をしたことがあるのですが、告示771号に適合した耐震天井の設計は今回が初めてでした。
最初は、耐震天井と告示771号に適合した耐震天井の違いがわからなかったですね。
建物を所有される施主の方は耐震天井について理解されている方は少ないので、設計者が耐震天井の種類等を理解し、改修レベルに応じた天井耐震化の方法をまとめ、施主の方が比較検討できるように資料の準備をすることから始まりました。
―――どのような流れで耐震化の実施に至ったのでしょうか?
もともとは敷地内にある陸上競技場のグラウンド改修がメインのご依頼であり、耐震改修の割合は小さいものでした。武道館は床の老朽化対策が主な目的でした。
さらにバリアフリー化も含まれておりエレベーター棟を増築をすることになりました。増築により、天井の耐震化もしなくてはいけないとなり、天井を耐震化することになったのです。
さらに、増築においては告示771号に適合した方法にて改修することが必須でした。
ここでネックになったのが、増築における既存不適格の考え方でした。
建物に関しては、建ったあとの法律は適用されず既存不適格となりますが、耐震天井と防火関係は除かれてしまい、耐震天井は現行法に沿って耐震設計を行うことが必須だったのです。
「増築により確認申請が必要になった場合、特定天井は告示対応で耐震設計することが必須」であるということを知っておくべきだと思います。
―――天井の耐震化を進める際に、課題などはありましたか?
約20年ほど前に耐震天井に改修した天井であったため、施主の方とは「なぜまた耐震化をしなくてはいけないのか」と議論になりました。
耐震天井の条件である壁際とのクリアランスの確保、ブレースの設置が出来ているという認識でしたが、桐井製作所さんに相談したところ、ブレースの設置方法が構造上適した方法ではないことがわかりました。また現行法に沿った耐震天井ではないことから、改めて現行法に沿った天井の耐震設計をおこなうことになりました。
私や施主の方も含め、法律の改正や耐震天井の種類などほとんど理解していませんでした。
もともと改修内容に天井耐震化が入っておらず急遽おこなうこととなったので、天井の耐震設計・施工はタイトなスケジュールとなりとても大変でしたね。最初から気づいていれば計画的に作業を進めることができていたと思います。
―――今回設計された天井は複雑な段差形状でしたが、設計を進める際にどのような課題がありましたか?
今回の天井には桐井製作所さんの新耐震Full Power天井を採用させていただきました。
複数の斜め天井が重なった形状を再現することになったため、耐震天井に必要な斜めブレース材の配置や垂れ壁の納まりの検討が大変でした。
ブレース材の配置については、配置するブレースの数が多く、さらに梁も多かったためブレースを通すのが困難でした。傾斜によりブレース左右の長さが異なるため施工は大変苦戦していた印象があります。
垂れ壁については、天井のLGSで組めばいいと思っていたのですが、高さが結構ありLGSで納められる仕様ではなく急遽構造設計と相談し鉄骨を使用した納まりに変更しました。
また、屋根面も傾斜だったので現状の吊元インサートが耐震天井では使用できない可能性が高いという話になり、引張試験や追加インサートの設置をおこないましたので、これも大変でしたね。
垂れ壁の納まりや吊元は最初から意識していなかったので、あとからどう調整しようかと苦戦しました。
―――最近では、天井の耐震化においてどのような取り組みをされていますか?
最近は、長寿命化対策の一環で音楽ホールの相談を受けることがあり、天井の耐震化の提案を行っています。
天井の耐震化についてご存知ではない自治体の方もいるので、計画に含まれていない場合は提案するようにしています。建築課が主体で動かれていると天井耐震化まで含まれていることが多いですが、教育委員会・文化振興課など管理部門の方が主体だと入っていないことが多いと思います。
当社でも、確認申請の際に特定天井の有無をチェックするので「特定天井」という名前だけは知っていますが、実際どういうことをしなくてはいけないのかまで知っている人は多くはないと思いますね。
―――告示771号対応の耐震天井を経験されて、最後に感想をお願いします。
以前に天井の耐震設計を行ったことがありましたので、以前のような流れですぐ終わるのかと思っていましたが、現行法に対応した耐震設計は大きく違いましたね。
私共の設計者もですが、施主の方にもこれだけ耐震天井の設計は大変だということを理解していただければ、少しでもスムーズに設計を進められると勉強になりました。
この経験を活かしてこれからも積極的に耐震天井の設計をしていきたいと思っています。
桐井製作所では、天井の耐震設計や施工を進めるにあたりお困りの方に、蓄積した技術力でお客様の課題に合わせたご提案をさせていただきます。
カタログ、CAD図面、施工要領書などもご提供しておりますので、是非ご相談ください。
また、KIRII耐震天井は、公共施設から商業施設まで10,000件以上の実績がございます。
複雑な形状を再現した音楽ホールなどの事例もございますのでご覧ください。
▼KIRII耐震天井の採用の経緯や決め手なども掲載
建物用途別、課題別にカテゴリを選択して見ることができます
KIRII耐震天井の導入事例(桐井製作所企業サイト)
※設計者のご意向により、会社名・氏名は伏せさせて頂いております。