天井の地震対策の必要性

天井落下の事例と地震対策の必要性

これまで地震が起きると様々な被害が引き起こされてきました。なかでも、天井落下による被害は今も続いており、いのちと暮らし、企業活動、避難所運営などへの影響が大きいことから、施設管理と建物設計では対策が急務となっています。

これまでの天井落下と被害

2001年:芸予地震

音楽ホールや体育館などの天井落下が発生し施設の利用者がけがを負ったと報告されています。この地震以前にも、けが人の報告が無かったために人命への危険性や具体的な対策まで言及された記述はないものの、体育館の天井落下の被害写真などはたびたび報告されていたと書かれています。

2003年:十勝沖地震

空港ターミナルビルの吹抜け部分の天井650㎡(36m×18m)のうち、約1/2に当たる約300㎡の天井が落下したと報告されています。ほかにも管制塔の各室、特にVFR室(管制室)では天井全体が落下したことが伝えられています。

2005年:宮城県沖地震

新たに建てられた総合スポーツ施設の温水プールでも天井が落下し、26人がけがをしました。この施設では同日、宮城県警が実況見分を行って天井の状況を調査しています。

2011年:東日本大震災

音楽ホールや避難所として機能するはずだった体育館、商業施設、スーパーマーケット、オフィス、廊下、工場など、建物の新旧や空間規模を問わず天井が落下しました。(社)日本建設業連合会からの報告では約2000件の被害が判明したそうです。さらに死者5名、負傷者72名以上であったと報告されています。

天井落下を防ぐために進む法整備

地震による天井落下の被害が報告され、その都度、国によって技術的助言や、対策に関する法整備が進められてきました。
特に東日本大震災後の2013年には、平成25年国土交通省告示第771号が施行され、一定条件を満たす規模の天井を「特定天井」とし、その設計における技術基準が定められました。

出典:国土交通省ホームページ掲載資料

文部科学省でも則った対策を推進し、国公立の学校での対策実施率は年々上昇していますが、2020年現在、まだ半数以上が未対策のままになっています。

それでも後を絶たない天井落下の被害

天井落下への対策が進む中、2016年熊本地震でまた避難所の天井が落下し、施設が使えなくなりました。避難所のほか、学校、文化施設、商業施設、アミューズメント施設、病院などでも被害が報告されています。
さらに2018年大阪北部地震でも庁舎、学校、病院、駅、空港などで報告されており、被害対策、復旧などのために全店休業した施設もあったと報道されています。
2019年山形県沖地震でも避難所の天井が落下しました。

いのちと暮らし 企業活動を守るために、天井の地震対策が必要

天井落下の対策が大規模空間や公立学校を中心に進んでいる一方、まだ追いついていない施設の方が多いことから、いのちと暮らし、事業継続、機能維持に甚大な被害をもたらし続けています。
大規模地震の危険性が高まる中、施設管理と建物設計では、地震落下への対策が急務となっています。

 

2021.04.26